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ブログ 土壌汚染とは

土壌汚染調査の責任は誰にありますか?

土壌汚染調査

土壌汚染調査の責任は土壌汚染の原因者にある、なんてことは誰にだってわかるし、当たり前のことです。

 

しかし、そんな当たり前のことだけで解決することがほぼ不可能なのが、土壌汚染という公害の非常にややこしいところ。

 

例えば、大気汚染は汚染原因者がはっきりしています。工場の煙突だったり、異臭を放つ研究所だったり。

 

原因者を突き止めることも決して難しいことではありません。そして、原因者である工場が環境へ配慮する意識を高めれば、大気汚染はやがて改善されていくでしょう。

 

ところが、土壌汚染は数十年もの間地中深くに封印されてしまう特徴を持つ汚染であり、何らかのきっかけでパンドラの箱が開けられるがごとく、周辺土壌や地下水へと拡散されていきます。

 

そしてその汚染の原因者が一体誰なのか全くわからないし、仮に判明したとしてもすでに倒産もしくは廃業した企業である場合が多い。

 

今回は、そんなややこしい土壌汚染の責任、そして土壌汚染調査を実施すべき責任者についてお話いたします。

 

責任の所在はどこ?

 

土地売買の場合は?

 ある土地の売買において、土壌汚染調査の実施義務は売り手にあるか、あるいは買い手にあるか。基本的には売り手にあります。

 

例えば、ある土地で特定有害物質使用特定施設が設置されていた履歴があったとします。土地の所有者がその土地を売買する場合、土壌汚染調査を実施する義務があります。

 

もちろん、調査の結果汚染が確認されれば土壌汚染を除去する工事を実施しなければならないでしょう。

 

ただし、必ずしもそうではない状況、つまり売り手が責任に責任がないという状況もあります。どういうことか。

 

いろんな状況が考えられますが、ここでは裁判事例にもあった2つの状況をご紹介しましょう。

 

土地を事業所に貸していた場合

 

土地の所有者が事業所に土地を貸して、その土地で特定施設が設置された工場が運営されていたとします。

 

その後事業所は倒産し工場は閉鎖、解体撤去され更地となって所有者に返されました。この場合、土壌汚染調査は事業所の責任者がしなくてはならないということになります。

 

とはいえ、倒産した事業所の責任者が土壌汚染調査を実施することができない場合がほとんどであり、結局行政の手に委ねられることになります。

 

両者の売買契約で特別な取り決めが交わされた場合

 

仮に売買の対象となった土地で特定施設の使用履歴があったとしても、その土地の立地が、商業的に価値が高いと認められれば、買い手が土壌汚染調査を実施する場合があります。

 

買い手側からすれば、一刻も早く調査を実施して汚染があったなら対策工事を実施して事業所や商業施設として利用したいという思惑があるわけです。

 

仮に土壌汚染調査費用や対策工事費用を負担してでも、その土地を買い取る価値があると判断すれば、売り手の調査義務は買い手へと移ることになります。

 

土壌汚染はない?

 

購入した人が、調査をして汚染が発見された場合は?

ちょっとややこしい話になるのですが、まず購入者は、購入した土地で過去に土壌汚染調査が実施されたかどうかを確認し、実施されたならばその調査報告書の中身を確認する必要があります。

 

本来ならば、購入者は土地購入前に売り手からそういったことを聞いておかなくてはなりません。もちろん、その前に売り手がその情報を提示する必要があるのですが。

 

仮に調査が実施されていて、土壌汚染がないという調査結果が出ているならば、残念ながら、購入後に何らかの理由で汚染されてしまったと考えなければならないでしょう。

 

調査が実施され、土壌汚染が確認されていたにもかかわらず、売り手がその事実を隠蔽していたならば、売り手の行為は違法となる可能性が非常に高くなります。購入者は裁判所に提訴すべきでしょう。

 

なるほど、裁判になるのか!

 

土地購入者が、次の人に転売し、その後汚染が発見された場合は?

 

この状況に関しては、以下の裁判事例が参考になるかと思います。

 

XYからマンション用地としてZへ転売する目的で、ガソリンスタンドの敷地として利用されてきた土地を6億円で買い受け、Zへ転売した。その後、Zが7地点で土壌汚染調査を実施したところ、各調査地点の一部から鉛、ベンゼン、トルエン、キシレンが検出された。そこで、XZとの間で土壌汚染対策費用のうち3500万円をXが負担することで合意し、そのうちZから請求を受けた3000万円について、Yに対し、売買契約の瑕疵担保責任条項に基づく損害賠償を請求したが、Xの請求は棄却された。(平成22年3月26日東京地方裁判所判決)

 

この案件では、転売者であるXに土壌汚染に対する責任があるという判決がなされています。

 

その理由は、XYから購入した土地がガソリンスタンドの跡地であることを知っていたこと、そしてガソリンスタンドでは土壌汚染が検出されやすいということがあげられるかと思います。

 

つまり、仮にXYが共謀してZにガソリンスタンド跡地である土地を売ったのであれば、当然XYの双方に土壌汚染に対する責任があるとされたはずです。

 

つまり土地の転売があった場合の土壌汚染に責任というものが一律に決められているわけではなく、その土地の状況次第で責任の行方が決まるということになります。

 

どうすれば?

 

汚染があることを隠して土地を売ればどうなりますか?

 土壌汚染があることを隠蔽して土地を売る、というのは極めて悪質な行為であり、多くの裁判事例で買い手の損害賠償請求が認められています。

 

ただし、これには3つのパターンがあります。

1.転売目的で購入した土地をそのまま売る

2.売り手が土壌汚染を知っていて故意に土地を売る

3.売り手が土壌汚染調査を実施せず、つまり汚染を知らずに土地を売る

 

まず1は、先ほどの裁判事例にあった例です。Xはガソリンスタンド跡地であることを知っていてXに土地を売ったため、損害賠償請求されることになりましたが、仮にしらなったとしても損害賠償請求を免れることはできなかったでしょう。

 

そして2です。非常に悪質であり、多くの裁判事例で買い手の損害賠償請求が認められています。

 

3は非常に判断が難しくなることがあります。

 

本来、土壌汚染調査実施の必要がない土地の売買契約成立後に、その土地で土壌汚染が見つかった場合どうなるのか。

 

地歴調査が実施されていれば、その調査結果に基づいて何らかの判断ができますが、それすら行われていない土地だと非常に難しい判断を迫られることになります。

 

過去の裁判事例を見ても、売り手に責任が及ぶ場合、買い手に責任が及ぶ場合、過失責任が半々で別れる場合と様々です。

 

その土地をめぐる状況次第ということになるでしょう。

 

購入前に調べること

 

契約内容が優先されますか?

 

結論から言うと、「その通り」ということになります。

 

先ほども言いましたが、基本的に土地の所有者が土壌汚染調査や土壌対策工事を実施する責任があるということになりますが、売り手と買い手の間で特別な取り決めがあるならば、それが優先されることになります。

 

訴訟になることはありますか?

 

大気汚染や水質汚染で人への健康被害が発覚した場合、汚染の原因となった企業の代表が逮捕されるという事態に発展することがあります。

 

ところが土壌汚染の場合、そういった刑事事件にまで発展するということは極めて稀です。極めて稀、というのは可能性としてゼロではないということで、私自身そのような事例を聞いたことはありません。

 

なぜか。

 

土壌汚染の場合、責任の所在が不明確なためです。大気汚染や水質汚染ならば、敷地の外へ流れ出てしまうため近隣住人にもわかりやすい。そして汚染原因者も特定しやすい。

 

もちろん土壌汚染も敷地外への影響はあります。地中に流れた汚染物質が地下水の流れに乗って拡散していくことは十分に考えられます。いや、地質学を知っているものならば、当たり前という感覚でしょう。

 

ところが土壌汚染対策法では、敷地外への汚染物質の拡散はないものとし、鉛直下にのみ汚染物質が染み込んでいくものとみなされるのです。

 

もちろん土壌汚染対策法が抱える大きな欠陥であることは間違いありませんし、その欠陥が、土壌汚染の原因者の特定ができないという状況を作り上げてしまっているのです。

 

土壌汚染関連の訴訟は頻繁に行われています。ただし、いずれも民事訴訟です。

 

まとめ

 

土地の売買に関する訴訟の事例は非常に多くあります。敷地境界に関するものや建物に関するもの、そして土地の相続に関するものが比較的多いと思われます。

 

そこに新たに加わる争いのタネが、土壌汚染問題です。

 

この土壌汚染問題の大きな問題が、必ずしも土地の責任者、所有者が汚染の原因者でるとは限らないという点です。

 

先祖代々から受け継いだ土地で汚染が確認されてしまった、あるいは事業所に貸した土地が汚染された状態で返却されたという状況がそれに当たります。

 

いずれも土地の責任者、所有者が原因ではなく、土壌汚染の原因者が不明である場合も多い。仮に原因者が分かったとしても、土壌汚染調査や浄化工事を実施させるのは極めて困難でしょう。

 

もちろん裁判所に提訴することが最善策でしょうが、判決が出るまで数ヶ月もの期間を要し、判決が出ても被告が判決を不服として控訴すれば期間は大幅に伸びます。

 

自ら土壌汚染調査や浄化工事を行うことが困難な土地の責任者、所有者は土地を放置せざるを得ない。その結果、ブラウンフィールドとなってしまうのです。

 

土壌汚染対策法を根本から考え直す時期に来ているのかもしれません。

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