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ブログ 土壌汚染とは

水質汚濁が土壌汚染を招くことはありますか?

河川汚染

水質汚染と土壌汚染。定義も法律も全く異なる両者ですが、地下水という面では、極めて関係性が深くなります。

以前にもお話ししたことがありますが、地上に降り注いだ雨はやがて地中に浸透し、地下水となって河川、海へと流れ着く。つまり、地球環境という大枠で考えた場合、水質汚濁と土壌汚染を分けて考えること自体ナンセンス!と言えるかもしれません。

今回はそんな土壌汚染と水質汚濁との関係性、繋がり、一体性についてお話いたします。

 

 

水質汚濁はなぜ起きるのですか?

日本における公害の歴史は「足尾鉱毒事件」から始まるといってもいいでしょう。

この時、公害の対象となったのは河川水でした。

人の生活のあらゆる場面、そして人の身体にも絶対に欠かすことができない水。それだけに使用頻度は極めて高く、必然的に使用後の水の量も多くなります。その水を適切に処理しなければ、それらの水は汚濁された水であり、水環境へと多大な影響を及ぼします。

人の日常生活に端を発する水質汚濁の要因は、し尿、洗濯洗剤、食器洗い用洗剤、生ゴミといったところでしょうか。これらは適切に処理をすれば何ら問題なく環境中へと戻されます。

産業活動に端を発する水質汚濁の要因は、し尿、洗剤類はもちろんのこと、機械洗浄で使用された薬品込みの排水や実験、製造で使用された薬品混じりの排水など・・・種類を列挙すればきりがありません。環境保全を担う産業の役割は極めて重要と言えるでしょう。

ただ、環境保全が叫ばれる昨今、各企業は自社内で排出された汚濁水の処理を自社で行なう体制が整っています。環境中に基準超過の汚濁水が流出することは極めて稀でしょう。

では、昨今の水質汚濁の原因は何か?一概には言えません。

水処理装置の故障、排水処理能力を越えた高濃度排水によるもの、もしくは下水に直接処理前の排水が漏洩したことによるもの・・・

可能性としてはもちろんあり得ることです。しかし、昨今の水質汚濁の主要な原因は土壌汚染によるものと考えられるのです。

各家庭や工場、研究所からの排水は、そのほとんど・・・いや全てと言ってもいいでしょう。その全てが下水道へと流され、水処理施設へと送られてそこで排水は、様々な工程を経てしっかり浄化されます。その後、環境中へと放流されるわけです。

もちろん、工場や研究所の排水は、下水道へと流される前に自社の排水処理施設である程度浄化されることもありますが、概ね各家庭からの排水と同じ経路を辿ります。

つまり、各家庭や工場研究所からの排水が、処理されずそのまま環境中へと流れることは、基本的にありえないのです。

では、昨今の水質汚濁の最も主な原因は・・・というと、土壌汚染を原因とする地下水汚染以外にありえないのです!

以前にもお話したように、山、平地を含めた地上全体に降り注ぐ雨は地中へと染み込み、それはやがて地下水となる。地下水は、日本人にとって第二の水資源ともなり得るほどの膨大な量です。そしてその地下水が流れるルートはまさに毛細血管。地中のありとあらゆる場所に地下水は張り巡らされているのです。

そんな地中のたった1箇所に高濃度土壌汚染が存在したとしたら・・・その影響は確実に地下水へと向けられます。たった1箇所の土壌汚染が地下水のほんの一部を汚染し、汚染された地下水はやがてあらぬ方向へと流れ続け、地下水汚染は予想すら困難なほどの広範囲にわたる汚染へと拡大を続けてしまうのです。

汚染された地下水は、やがて河川や海へと流れつき、重大な水質汚濁の原因となる。これが昨今の水質汚濁の原因と言えるでしょう。

 

 

水が汚染されるとどのようなことが起きますか?

地球上に住むありとあらゆる生物にとってなくてはならない水、その水が汚染されるということは、その生物が生命の危機にさらされることを意味しています。では、その汚染の原因とは何か?

先ほども言ったように、通常は下水処理設備が整っているため、水が汚染されることはほとんどありません。

もちろん、突発的な事故により水が汚染されることは当然考えられます。例えば、広範囲に原油を積んだタンカーの事故、毒劇物の下水への漏洩などは重大な水質汚濁の原因となります。

とはいえ、突発的な事故はなかなか防げるものではありませんし、万一の事故への備えはどこの企業、施設でも行なっていること。それ以上のことはできません。

私が考える最も深刻な水質汚濁の原因は、土壌汚染を原因とする地下水汚染であると考えています。残念ながら、地下水汚染はどのような水処理施設、最新の技術を持ってしても防ぎようがありません。当然ですよね。地下水はパイプの中を通るものではなく、地中の土壌の隙間を通るものなのですから。

汚染された地下水の排出先は河川や海。そうです。多くの生物が生息する中に汚染された地下水が注ぎ込まれることになるのです。その結果、まさにこの世の終わりともいうべき事態が発生してしまいます。

河川や海に住む多くの魚がプカプカと水面に浮かび、水の色は自然の法則上あり得ない色を帯びる。そしてそんな毒劇物を体内に有した魚が、私たちの食卓に上がる!

その結果、イタイイタイ病や水俣病などの公害事例が現在に蘇る事態に発展してしまうのです。

私たちの生活に絶対に欠かすことができない水という資源。その水が汚染されてしまった場合の影響は計り知れないでしょう。

 

 

土壌が汚染されるのはどのようなケースなのか?

土壌が汚染されるケースは、様々です。このブログでも土壌汚染の原因については多く語ってきました。しかし、ここで地質学上では地下水汚染と土壌汚染を分けて考えることはできないということを強調するために、再度ここで土壌汚染の原因についてお話しましょう。

 

土壌汚染の原因となるケース① 過去の負の遺産

今でこそ土壌汚染対策法という法律が存在し、土壌汚染の原因となった事業者は、土壌の浄化という厳しいペナルティーを課せられることになっています。しかし、この土壌汚染対策法、平成15年に施行されたばかりのまだまだ新しい法律です。

つまり、法施行前はどれだけ土壌を汚染させようとも、それを取り締まる法律が存在しなかったのです。

「どんな汚染物でも土に埋めておけば誰にもわからない」

事業者がこのような考え方をしていたかどうかはわかりませんが、実際に歴史ある工場の跡地には極めて高濃度の有害物質が検出されることが少なくありません。

極端な例だと、ドラム缶に詰め込まれたドロドロの液体が地中から掘り出されたこともあります。これはかなり悪質な例ですが。

そうして地中に残留した汚染土壌中の有害物質は、自然に浄化されることはありません。少しずつ地下水へと溶出され、広範囲に拡散されていきます。

地下水が汚染土壌を徐々に洗い流してくれるのでは?という期待は一切しないほうがいいでしょう。もちろん、汚染土壌中の有害物質が、徐々にその量を減らしていくことは確かですが、全ての有害物質を洗い流すには何十年もの時間が必要です。

その間、地下水は汚染され続け、地下水中の有害物質は拡散し続けるのです。

 

土壌汚染の原因となるケース② 有害物質の漏洩事故

有害物質の漏洩事故は、大事故から事故にすらならない小規模なものまで様々。しかし、大事故だからとって重大な土壌汚染を引き起こすとは限らず、また小規模なものだからといって安心もできません。その理由をお話します。

大規模な有害物質漏洩事故といえば、例えば、有害物質を貯蔵する巨大タンクの破損によるものがあります。この規模になると、事業所全体が事態の収束に動きます。

まず、策を講じて巨大タンクからの有害物質漏洩を食い止め、早急に巨大タンクを修復。その間に、地面に流れた有害物質を回収し、地中への漏洩の有無について確認する。場合によっては、漏洩箇所の周辺に観測井戸を設置して、地下水への影響の有無を調査する。

漏洩事故の記録は事業所の事故履歴に記録され、役所へと報告されます。役所からは何らかの指導がなされますが、ひとまず事態は片付くことになります。

無論、あってはならないことですが、万が一そんな事態は発生してしまった場合は、可能な限り素早く、そして環境への影響を最小限に食い止める努力が必要でしょう。

ひるがえって、事故にもならない小規模な漏洩です。小規模な漏洩は、場合によっては大規模なものよりも深刻な事態を引き起こす可能性があるのです。

小規模な漏洩ってどんなものか?例えば、薬品瓶を台車で運ぶ際、瓶を転かして中の有害物質が地中に流れてしまった場合。

周りに誰もおらず、人目に触れることもなければ、ほとんどの人はそれを大げさな事故になることを恐れてひたすら隠します。わざわざ「すみません!わたし有害物質をこぼしましたっ!」なんて大声で叫んだりしませんよね!?よほどバカ正直な人ならば別ですが。

ただ、そんなほんの少しの漏洩も、地中に漏洩してしまうと極めて重大な土壌汚染を引き起こしてしまう可能性があるのです。

工場や研究所で使用している試薬は基本的に自然界には存在しないもの、いや、存在はするのですが、自然法則から言えば、あり得ないくらいにまで濃縮に濃縮を重ねたものなのです。

つまり、そんな試薬がほんの少しでも地中に漏洩してしまうと、その影響は極めて重大となり、誰にも知られず、何ら対策を講じられることもなく土壌が汚染されてしまうことになるのです。

 

事故は防げないのか?

 

河川や湖畔の近くは土壌汚染が多いですか?

さてここまでお話すれば、この質問の答えは自ずと導き出されるかもしれませんが、一応解説を行ないます。

河川や湖畔の近くは土壌汚染が多いか?もちろん一概には言えません。土壌汚染が発覚する場合もあればしない場合もあるでしょう。

ただ、先ほども言ったように、汚染土壌中の有害物質が溶出された、つまり汚染された地下水は方々に拡散され、広範囲に渡り地下水や土壌を汚染します。そしてその地下水の行き着く場所は河川や湖畔、そして海。

つまり、汚染された地下水が集まりやすい場所ということになるのです。必然的にその周辺の土壌は、他の土地よりも汚染されやすいと言えるかもしれません。つまり、この質問の回答はイエスとなる可能性は高いでしょう。

 

まとめ

 「水質汚濁が土壌汚染を招くことはあるか?」冒頭の質問です。

ここまで読んでいただいたあなたにはもうお分かりだと思いますが、私はこの質問に対しては当然イエスと答えます。

しかし、この質問に一体何の意味があるのでしょうか?もともと水質汚濁も土壌汚染も一体のもの。分けて考えることに何の意味もないはずです。

もちろん、公共用水域を流れる、つまり水道管や下水道を流れる水は別です。直接土壌に触れることはありませんから。

水質汚濁の「水質」が地中を流れる地下水をさす場合、水質汚濁イコール土壌汚染と考えるべきでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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