近畿の土壌汚染調査は阪神Gテクノス株式会社におまかせください。

ブログ 土壌汚染とは

スーパーファンド法と日本の法律何が違うの?

法律に関して

土壌汚染に関する日本の法律である土壌汚染対策法。この法律の不完全さは、これまでお話ししてきた通りですが、今一度簡単に説明してみましょう。

 

土壌汚染対策法の問題点は、まず地質学の要素を一切考慮に入れず画一的な調査方法を採用してしまったことにあります。そのため多種多様な土壌汚染形態に対する柔軟な対応ができず、土壌汚染を防ぐどころかむしろ汚染を拡大させる可能性もあります。

 

また、土壌が汚染された土地の所有者、または汚染の原因者だけにその浄化責任を負わせてしまうことにより、莫大な土壌汚染浄化費用を捻出させるか、または費用負担を防ぐために汚染された土地の対策を実施せず塩漬け状態にさせてしまうことになり、法が機能しない事態に陥っています。

 

その点、アメリカの環境関連法であるスーパーファンド法は、浄化費用面で日本の土壌汚染対策法とは大きく異なります。

 

今回はそんなスーパーファンド法について詳しくお話いたします。

 

そんなに違うの?

 

スーパーファンド法って何?

では、アメリカの環境関連法であるスーパーファンド法とは一体どんな法律なのか?

 

実は、スーパーファンド法制定のきっかけとなったある事件が存在し、まずはその事件についてお話しなくてはなりません。その事件を「ラブ・キャナル事件」と言います。

 

ラブ・キャナル事件

ナイアガラの滝で有名な、ニューヨーク州のナイアガラ・フォールズ市には、古い運河がありました。19世紀末にウィリアム・ラブという人が建設途中で放置した運河なので、ラブ・キャナルと呼ばれていました。

 

当時は環境への配慮が極めて低い、いやほとんどないと言ってもいいくらいの当時。そのラブ・キャナルはきっとゴミを捨てるのに適した立地だったのでしょう。

 

なんと!!1942年から1952年にかけて、地元の化学工業会社がベンゼンやクロロホルムといった発がん性物質21,800トン余りを数千のドラム缶に詰めて、そこに廃棄してしまったのです。

 

とはいえ当時は、廃棄したものは土を被せてしまえば全く問題ない!と考えられたかどうかはわかりませんが、とにかくそのラブ・キャナルは、臭い物に蓋をするかのように埋め立てられて広い土地に生まれ変わりました。見た目には綺麗でまっさらに土地になったわけですね。

 

そのまっさらな埋立地は、当の化学工業会社によって市の教育委員会に、たったの1ドルで売り払われたのです。1ドル・・・もはや当時のレートが、とかそんなレベルの話ではありません。これほどの常識はずれの格安売却の見返りに、会社は市の教育委員会にある約束をさせます。

 

「将来、公害騒ぎが起きたとしても会社は一切責任を負わない」

 

もしかしたら、その化学工業会社はその後の大問題を予感していたのかもしれませんね。

 

その後、その土地には小学校や住宅が建てられます。見た目はまっさらな土地ですから、なんら問題はないわけです。

 

ところが、1971年から1977年にかけて、大雨が降るたびに埋め立てた土から水がしみ出して悪臭がたちこめるようになり、しかも、その土地周辺では流産や死産が相次いだのです。

 

後に詳しく調査が実施され、その結果、ダイオキシン等の有害物質が土壌・地下水・大気から検出されました。当然、ラブ・キャナルに大量に廃棄された発がん性物質が原因です。

 

この調査結果を受け、1978年に地元住民が改善を求めて集団決起、1980年には、環境保護局が改めて健康調査が実施され、地元住民36人のうち11人に染色体の異常が認められたのです。

 

これが大きな社会問題に発展し、当時のカーター大統領が「緊急事態宣言」を発令するに至ったのです。

 

その土地の小学校は一時閉鎖、地元住民の一部は強制疎開することとなり、その一帯の地域は立入禁止、国家緊急災害区域に指定されました。

 

この一連の事件を受けて、環境関連法であるスーパーファンド法が制定されることとなったのです。

 

何にでも由来はあるんだね!

 

スーパーファンド法の名称の由来

さて、そんなスーパーファンド法。この法律の名前、「一体どこが環境関連の法律なのだ?」と思われるかもしれません。

 

スーパーファンド・・・つまり、優れた基金?確かに意味不明ですが、実はこの法律名は、法律創設当初の基金総額が16億ドルという巨額なものであったため「スーパーファンド」とつけられたのです。

 

16億ドル・・当時のレートでいうと日本円で約4000億円!!確かに巨額です。それほど、ラブ・キャナル事件の衝撃が大きかったということなのかもしれませんね。

 

このスーパーファンド法、基本的に大気・水・土壌などの環境全般にかかる法律ですが、このブログでは土壌に重きを置いてお話いたします。

 

スーパーファンド法の特徴

この法律の大きな特徴は、浄化に必要な費用を「有害物質対策信託基金」から拠出する点にあります。

 

この基金は、石油化学製品に課した税金14億ドルと一般財源2億ドルから成ります。

 

スーパーファンド法制定以前、アメリカで環境関連法が制定されており、それが大気汚染防止法・水質汚濁防止法・資源保全回復法等です。これらの法律は、現在起きている環境汚染について規制するという点で共通しています。

 

しかし、それではラブ・キャナル事件での反省が活かされないとし、スーパーファンド法では、過去の行為によって引き起こされた汚染に遡及して対処することができるようになりました。

 

スーパーファンド法制定の大きな目的の1つがこの点であり、その特徴は次の3点にあります。

 

①汚染の責任者を明確にし、アメリカ政府が命令、訴訟によって責任者に浄化させる権限を持っていること。

 

②アメリカ政府自体が、浄化のための基金を持っていること(ただし、浄化にかかった費用は実際には責任者に請求して払わせます)。

 

③アメリカ政府が、汚染された場所の指定や浄化の優先順位の決定、浄化の実施を行うこと。

 

汚染の責任者とされるのは、非常に広範囲にわたります。

 

汚染された施設の現在の所有者や管理者、有害物質が放出された時点での対象施設の所有者や管理者(過去の所有者や管理者)、対象施設に運び込まれた有害物質の発生者、対象施設へ有害物質を輸送した運送業者です。

 

さらに、裁判での判決によれば、企業の代表者・役員・従業員個人、企業の大株主・親会社、工場の購入者、金融機関等が責任当事者とされたこともあります。

 

そして、善意の購入者についても厳密な規定がされています。

 

①購入前に有害物質について十分な調査をする。

②第三者による予見可能な作為・不作為に対して注意を払う。

③汚染物質があったことを知らずに購入したことを証明する。

 

どれも難しい条件です。

 

そのため、アメリカでは物件を購入する際にはできるだけ調査して汚染状況を明らかにしておくのが、常識になっています。そうしないと、後に自分が責任者とされ、莫大な賠償責任を負わなければならなくなるからです。

 

土地購入者や権利者、使用者をはじめとする土地の関係者にとっては、非常に厳しい法律と言えますが、逆に言えば、土地をこれ以上汚染させないためには必要な法律ともいえるでしょう。

 

法律は厳しいくらいでちょうどいいんです!

 

同じ内容のものが日本でできたらどうなるの?

 

現状、日本では土壌汚染が発覚した場合、基本的にその原因者に責任が及ぶこととなり、浄化にかかる費用も原因者が負担しなくてはなりません。もちろん、莫大な金額です。

 

そのため土壌汚染対策法では、「形質変更時要届出区域」という区域の設定が設けられ、汚染土壌は存在するが浄化の必要はない・・というよくわからない汚染状況の土地が誕生することとなりました。

 

この「形質変更時要届出区域」の指定を受けた土地は年々増加しており、その土地の土壌の掘削や土地の改良を行う場合は、行政への届け出が必要となります。

 

しかし、この土地の設定に一体何の意味があるというのか?

 

濃度は低いとは言え、土壌汚染が発覚した非常に危険な土地であることには代わりなく、この土地の実質的な放置が認められてしまう状況に違和感を覚えます。

 

その点、スーパーファンド法では、汚染土壌の拡散をできる限り防ぐべく、土壌汚染対策のための基金を準備し、対策を行なってからその土地の関係者すべてにその費用負担を負わせるという仕組みを取っています。

 

何よりも環境保護を重要視したスーパーファンド法が仮に日本で制定されたとしたら、もちろん日本の経済状況に合わせるための微調整は必要でしょうが、日本の土壌汚染問題は解決へと向かう可能性はあるはずです。

 

特に日本では汚染された土地の放置、つまりブラウンフィールドが問題視されています。放置された汚染土壌はやがて地下水を介して周辺土壌を汚染する。これを防がなくてはなりませんが、日本の土壌汚染対策法では、どうもその逆のことをしているような気がしてなりません。

 

豊洲問題も解決かな!

 

日本にも似た事例はあるの?

かつて日本でも、豊洲土壌汚染問題というラブ・キャナル事件と似たような事例が発生しました。これこそ、ブラウンフィールド問題が顕在化した典型的な事例と言えるでしょう。

 

築地に代わる豊洲市場は開場しましたが、土壌汚染問題は未だくすぶり続けています。これが果たしてどのような事態になるのか?それとも何事もなく数十年の月日が過ぎ去るのか?注視していかなくてはならないでしょう。

 

まとめ

 今回お話したスーパーファンド法、早急な土壌汚染対策が実施されるという点や対策にかかる費用の負担拡散という点では、日本の土壌汚染対策法と比較すると優れたものであるとうことができるでしょう。

 

しかし、費用負担の及ぶ範囲については批判もあり、土壌汚染対策の模範となる法律と言えるかというと、難しい点もあります。

 

日本は、このスーパーファンド法を模倣して法改正を行なうべきか、新たな道を探るべきか、意見の分かれるところではあります。

 

何よりも、日本の国土を汚染から守るにはどうすれば良いか?この原点に立ち返り、見習うべきは見習って法改正をすべきでしょう。

 

土壌汚染ってナニ?身近にあるリスクについて 資料請求


TOP